1本目の大統領令「量子イノベーションの次なるフロンティアへ」は、2028年までに「科学的に有意義な」量子コンピュータの開発を連邦機関に指示するものです。商務省・エネルギー省・国防総省およびNASAに対し、5年以内に量子センサーとネットワーク技術の展開計画を策定するよう求めています。エネルギー省が技術仕様を定義し、国立研究所などのDOE施設への配備を目指すとされており、より大規模な量子システムへの中間ステップと位置づけられています。

2本目の大統領令はサイバーセキュリティに焦点を当てています。国家安全保障覚書10号で定められていた2035年の移行目標を廃止し、連邦システムの耐量子暗号採用期限を2031年12月に設定しました。商務省は国立標準技術研究所(NIST)を通じて2027年末までに連邦システムの移行パイロットプロジェクトを開始するよう指示されています。サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は重要インフラ事業者の量子耐性暗号への移行を支援する役割を担います。

これらの大統領令は、量子コンピュータが政府ネットワークから暗号資産ウォレットまでを保護する暗号標準を解読しうる「Qデー」への備えを強化するものです。ホワイトハウス科学顧問のマイケル・クラツィオス氏は「トランプ大統領は量子技術を経済・国家安全保障上の最優先事項と長年認識してきた」と述べました。大統領令はさらに、量子研究をサイバー脅威や防諜脅威から守る取り組みの一環として、FBIの量子情報科学・技術防諜保護チームの拡充も盛り込んでいます。

暗号資産業界でも耐量子化への動きが加速しています。Googleが2029年を耐量子暗号採用の目標年として設定し、BTQ TechnologiesはBIP-360に基づく量子耐性Bitcoinテストネットを立ち上げました。Coinbaseの量子諮問委員会は約700万BTCが将来的に量子攻撃に対して脆弱になりうると警告しており、Algorandは2027年までに広範な量子耐性の実現を目指すと発表しています。今後は各機関の具体的な移行計画の策定状況が焦点となります。